B2BコマースのDX: なぜB2BはB2Cのベストプラクティスを採用すべきなのか

Algolia Advent Calendar 2021の12月2日の記事です。AlgoliaのTanya Hermanが書いた B2B commerce digital transformation: Why should B2B retailers adopt B2C best practices の翻訳です。


B2B (企業間のeコマース) におけるデジタルトランスフォーメーションでは、デジタルユーザー体験に対する要求が高まってきています。つまり、B2B eコマースの需要が急速に伸びてきていると言え、現在B2Bにおけるプロダクトの購入の約75%は既にオンラインで行われているとのことですが、更にB2Bバイヤーの30%はプロダクトの90%以上をオンラインで購入したいと考えているものの、実際にそうしているのは19%に過ぎないということです。B2Bサイトの訪問者の行動は、プロダクトの購入だけにとどまらず、商品情報の収集、ヘルプセンターの検索などのカスタマーサービスに関連するやりとり、セールスやサポートの担当者とのチャットや電話でのコミュニケーションなど、様々な分野に広がってきています。現在B2Bバイヤーの62%がオンラインでの情報収集を希望していて、企業はB2Bコマースのプロセスや体験に関する顧客の新たな要求や期待を考慮する必要が生じてきています。

今日では、B2Bの購買における90%以上は検索からはじまっていて、ほとんどのインタラクションは既にデジタルなチャネルを通して行われています。新しい世代のバイヤーはB2B eコマースプラットフォームに対して、適切で且つ直感的なプロダクト検索およびナビゲーション、より簡単で素早いチェックアウト、簡単なリピート注文、クイックな配送、トラッキング機能の向上など、より高い期待を寄せています。

“オンラインB2BのリーダーであるAmazon Business、W.W. Grainger Inc.、MSC Industrial Supply Co.、Hewlett-Packard Enterprises、そして、Dell Technologiesなどは、何年も前から製造業者と販売業者の間でのeコマースのバーを挙げてきました” (Source: Order Up: Brewing an effective purchase path for B2B buyer, August 2021)。こういった企業たちは、B2Bのデジタルトランスフォーメーションにいち早く追随したわけですが、そこには、B2Cのeコマースのベストプラクティスを採用したことで、B2B領域のリーダーとなり、現在では業界を支配する存在となっています。

“製造業者であるHPEやDellは、オンライン注文や洗練されたプロダクトコンフィグレーターなどの関連システムに長年投資を行ってきました。販売業者であるGrainerやMSCは、eコマースサイトやモバイルデバイス、インターネット接続型の自動販売機、EDIといった複数のデジタルなチャネルを通じて、顧客がプロダクトやサービスを探して注文する方法を改善し続けています” (Source: Order Up: Brewing an effective purchase path for B2B buyers, August 2021)。このようなB2Bコマースプラットフォームのデジタル化への戦略的な投資は、企業の将来性を高め、競合他社との差別化を図るとともに、業界の変化に迅速に対応し、イテレーションを回していくことを可能にしています。更に、継続的なイノベーションというカルチャーは、新しい技術の導入をよりスムーズにし、トレンドへの対応が遅れている組織と比較して変化に対する社内の抵抗をはるかに少なくします。

B2Bコマースの現在のトレンド

業界をリードするB2B eコマースマーケットプレイスのプラットフォームには以下のような機能があります (Source:AmazonPromo Marketing MagazineAlibaba 2021)。

  • 様々な業界やカテゴリの製品を調達するハブとなるようなプラットフォーム
  • バイヤーは業界やプロダクトカテゴリごとに並べ替えや検索が可能
  • 企業の購買カードをサポートし、数量のボリュームディスカウントやビジネス限定の価格、その他の特定などを提供するプラットフォーム
  • DE&I(Diversity, Equity, and Inclusion)といった様々なサプライヤー/セラーのフィルタリングオプションによって、バイヤーと小規模で多様性のあるセラー、サプライーやー、業種業態、年間レベニュー、国、業界経験、事業を展開する市場などを結び付けられるような設計
  • バイヤーとセラーがチャット機能を利用するなどして、プラットフォーム上で直接価格交渉を行うことができるプラットフォーム
  • B2Cのユーザー体験やベストプラクティスを活用したプラットフォーム

B2Cのベストプラクティスを参考にしたUI/UXデザイン

以下の例では、Amazon B2Bマーケットプレイスで、各業種のビジネス顧客に合わせて、それぞれ異なるプロダクトカタログとUIデザインを採用し、各ユーザーに最も適合性の高いプロダクトだけが表示されています。

ランディングページのベストプラクティス

以下の例では、AmazonがB2Bマーケットプレイスの業種ごとにランディングページのUI/UXデザインをカスタマイズし、各ビジネス顧客セクターのニーズに最適なサービスを提供しています。企業向けの商品やサービスの販売は、個人向けの販売とは異なる点があります。B2B企業は、B2C分野では一般的とは言えない課題に直面することがあります。例えば、B2B企業がビジネス顧客から信頼を得るには、専門的な知識を提示し、バイヤーの業界の状況をランディングページに反映させる必要があります。

プロモーションやレコメンデーションなどのアドバンストなeコマース機能

以下の例では、B2BマーケットプレイスのAlibabaが、B2Cのeコマースサイトで一般的に使われているアドバンストなeコマース機能を、B2Bマーケットプレイスのユーザーに提供しています。ユーザーの検索クエリに基づいた商品のレコメンデーション、カテゴリーのプロモーション、レコメンドされた検索クエリなどです。

大手のB2B製造業者やリテールのサイトは、大手のB2Cサイトと同様のアドバンストなeコマース機能を備えています。成功しているB2Bのeコマースサイトは以下のようなB2C eコマースにおけるベストプラクティス(Source: Baymard Institute)とB2Bだけに特化した機能を備えています:

  • プレディクティブなクエリサジェストを含むAutocomplete検索。SKU単位での検索などB2Bユーザー特定の振る舞いに対応
  • 適合度の高い検索結果
  • 効果的なフィルタリングとナビゲーションでビジネスニーズに応える
  • ビジネスユーザー毎にパーソナライズされたカタログ、検索結果、価格など
  • AIによる最適化とアドバンストなマーチャンダイジング戦略によって、コンバージョンと売上を向上
  • 直感的でありながらB2Bに最適化されたチェックアウトのフロー
  • 新規ユーザー、帰ってきたユーザ、経験豊富なユーザーに対応したUX

なぜB2Cのプラクティスの導入が急務なのか?

B2C企業のデジタルトランスフォーメーションは、B2Bのリテール企業よりも早くはじまりました。Covid-19のパンデミックによりeコマースを進化させ、顧客の要求や期待が変化していく中で、それに対応する必要性の高まりが、技術的に精通しているB2Cのリテール業者は複数のツールを組み合わせて活用することでAmazonなどの大手のB2C業者と方を並べる準備をしてきました。今日の消費者は、よりクイックで適合度の高い検索結果、簡単なサイトナビゲーションと注文プロセス、プロダクトのレコメンド、便利なチェックアウトプロセス、そして親切なカスタマーサポートのサービスに慣れ親しんでいます。この新しい世代のビジネスパーソンは、B2BサイトにおいてもB2Cと同様の機能とユーザー体験を求めています。B2Cの大手リテール企業がB2Bの世界に参入して席巻をしていく中で、B2Bのリテール企業が生き残るためには、ビジネスユーザーの期待にできるだけ素早く対応し、B2Cのeコマースのベストプラクティスを自社サイトに導入していくことが重要です。

デジタルトランスフォーメーションがB2B業界に与える影響

  • 市場サイズ: B2B市場全体の規模としては67兆USDということで、世界のリテール市場のおよそ3倍に相当する(Source: RBC Capital Markets, CNBC)
  • ビジネス機会: 現在のB2Bの世界では、未だ効率的にサービスが提供できているという段階には達していない(Source: RBC Capital Markets, CNBC)。今日のオンラインセールスは比較的少ないと言え、B2Cに比べると遅れているものの、着実に成長はしており、オンライン拡大の大きな可能性を秘めている。B2Bの顧客は、現在B2Cのユーザーに提供されているのと同じ購買体験を期待している。B2B企業はB2Bのeコマースプラットフォーム、テクノロジーインフラ、その他のオンライン取引支援システム(価格設定エンジン、在庫管理など)のデジタルトランスフォーメーションに投資をしていくことで、より大きな市場にリーチすることが可能
  • サクセスメトリクス: マッキンゼーが行った調査によると、デジタルトランスフォーメーションに成功したB2B企業は、同業他社と比較して株主利益が8%以上、レベニューのグロースが5倍になる

Amazonのような業界リーダーたちは、B2Bリテール市場を支配していくと予想されています。AmazonはB2Cのベストプラクティスを採用して、B2B特有のニーズや共通のペインポイントに対応するなど、B2Bのデジタルユーザー体験やeコマースプロセスの最適化に適切なアプローチをとっていくことで、市場シェアと収益性の飛躍的な向上を実現しています。

  • Amazonのビジネス(B2B eコマースマーケットプレイス)では、2023年までに収益が310億USDに達し、同じ時期に売上高は(2019年の)5倍の520億ドルになると予想 (Source: RBC Capital Markets, CNBC)
  • 2019年のAmazonビジネス(B2Bリテール)の成長率はAmazon(B2C)の約3倍(Source: RBC Capital Markets, CNBC)
  • Amazonビジネスは、2019年にAmazon Web Servicesにおいて1.6倍の成長を遂げた。その歳のAWSの売上高は256億6000万ドルから350億2000万ドルへと37%増加 (Source: RBC Capital Markets, CNBC)
  • Amazonビジネスのグローバル調達ソリューションは、世界9ヶ国で500万以上の企業に使われていて、全世界での年間の売上は250億ドルに達している(Source: Amazon, 2021)

B2B eコマースの特徴と影響

特徴影響
ユーザーセグメントドメインエキスパートおよびリターンユーザーは、プロフェッショナルなコンテキストおよびプロダクトの知識を持ち合わせているB2Bユーザーはプロダクトの知識が豊富で、SKUの検索、ナビゲーションのパンくずのクリック、フォームのキーボードタブ操作など、ナビゲーションのショートカットを活用する傾向がある
‘ドメインエキスパート’ の失敗新規ユーザー(B2Bブランド、専門的な用語、業界ドメイン全体に慣れていない)への配慮が欠けている場合、ナビゲーションに問題が生じるB2Bサイトにおいては、新規顧客の獲得につながる可能性のある新規ユーザーを軽視することは機会損失を招く
個別のユーザーの重要性個別のユーザーは大きな利益の源泉で、疎外感を与えてしまうことはよろしくないB2Bサイトでは、カスタマーサポートソリューションへの投資が多く、B2Cサイトではマージンを考慮し、サポートは最小限に抑える
ユーザーのインテントB2Bプロダクトのブラウジングはより意図的で問題ドリブンであるB2Bユーザーは特定のプロダクトの属性でフィルタリングをしたり、機能でクエリ(特定のものを探す)を行う傾向がある
チェックアウトフロー / 複雑性チェックアウトのフローや注文の確認が複雑になる(請求先と配送先住所を分ける、VAT番号、会計情報など)。支払い方法が非同期的なものになる場合もある(請求書、発注書、クレジットなど)B2Bのチェックアウトでは、豊富な機能と使いやすいプロセスの適切なバランスのために、チェックアウトの最適化が必要
eコマースの機能性eコマースの機能はプロダクトカタログとは分けられているのが一般的WebサイトのUXという観点からすると、カタログとeコマースの分離は、ユーザーが期待するWebとしての機能からは乖離する
Source: Baymard Institutehttps://baymard.com/premium/guideline-collections/t0ynv1

今までのB2Bリテールビジネスを最新のデジタルeコマースプラットフォームにトランスフォームしていくためには、ソフトウェアアーキテクチャを再設計および再構築する必要があります。こちらは、eコマース業界のベストプラクティスを導入し、活用していくために必要なステップです。更に、このようなアーキテクチャの変更は、B2B組織の将来性を高め、クイックで効率的なイテレーションを生み出していき、最新のトレンドやビジネスに影響を与えるようなイベントにも素早い対応ができるようになります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました