こちらはAlgoliaのCiprian(@cborodescu)が書いた、Increase your ecommerce ROI by predicting users’ next shopping stages の翻訳記事です。
物事が上手くいった際は満足を得ることができます。上手くいっている時は穏やかな感情で、もし掛け金が十分に高ければ、人間としての希望を取り戻せるかもしれません。
どんな気持ちであるか考えてみましょう:
- 最初のGoogle検索で欲しいものを見つける
- 狙っていたジャケットがセール中(あなたのサイズ!)
- 予定よりも早い配達
購買客として、私達はこのような体験にバリューを感じます。私達は購入したブランドや会社を、その取引の満足度に基づいて判断および評価します。しかし、購買者からプロダクトを構築する側へと役割が変わると、優先順位の高さに気を取られてしまい、知らぬ間に素晴らしい顧客体験を生み出すことの重要性を忘れてしまうことがあります。そんな場合でも、お客様は決してそれを忘れませんし、私たちのKPIにはお客様の満足度がクリアに反映されます。
お客様のニーズを理解することは、お客様の期待値(と、あなたのマネージャー)の期待に沿うためのヒントになるでしょう。
更にエキサイティングなことに、つい最近まで世界の中でも大企業しか活用することのできなかったようなテクノロジーを使うことができるようになりました。機械学習やAIによる最適化を活用して、マーケティングパフォーマンスを新たな高みに引き上げることができるようになりました。
小さな改善で大きな成果
大手のマーケティングコミュニケーションエージェンシーのCEOで、Forbesに寄稿もしているJon Bird氏によると、マーケティングテクノロジーの次の段階としてのeコマースの予想は、共通のアイデアに集約されています: ショッピングは”デジタル化が進むものの、より人間味を感じるものになり、テクノロジーは益々目につかなくなる – が、更にその力がより増していく“。
AIを使ったとしても、お客様の体験がより良く、早く、適合していて、より満足いくものでなければ、何の違いも生み出しません。お客様の次のショッピングステージが予想できるようになれば、お客様をよりコンバージョンさせやすくなるでしょう。
つまり、以下のようなものをもたらすことで、オンラインショッパーはより簡単に購買を行うことができるようになります:
- カスタマイズされたオファー
- パーソナライズされたディスカウント
- より適合したレコメンデーションによる商品のマッチング
- ターゲティング通知
さらに、リマーケティングキャンペーンを通じて購入する可能性の高いユーザーをセグメント化してターゲティングすることで、マーケティング予算のROIを向上させることもできます。ここでは、AIがどのようにしてこのプロセス全体をより簡単に、早く、そして効果的にしているかというところをご紹介します。
買いたいと思っていることを知らなかったユーザーセグメントへの訴求
オンラインでお買い物をするお客様にカスタマイズされた体験を提供するという考え方自体は今にはじまったことではありません。このようないわゆるパーソナライゼーションは、多くの場合、セグメンテーションに置き換えることができます。セグメンテーションとは、顧客に共通する特徴を特定して、あらかじめて定義されたユーザーセグメントに基づいてターゲットを絞ることです。
今までのマーケティングの専門家は、コンバージョンに繋がる可能性の高い理想的なユーザーを定義するために、フィクショナル(架空)のカスタマープロファイルを構築していました。そこでは以下のような調査や分析から得られた基準に基づいて仮説を立てていました:
- 年齢
- 性別
- 場所
- 使用デバイス
こういったアプローチはスタンダードなものとなり、どこも似たような戦術を使うようになりました。標準的なマーケティングのツールボックスと言えば:
- オンライン広告
- お気に入りや買い物かごに入れたものを最終的に購買させる為のEメール通知
- 割引率
- RuleベースのCTA(calls to action / 行動喚起)
このアプローチは、購買客のアテンションにかかる競争が激しいことに加え、他にもいくつか、そこまで明確ではないデメリットもあります。
例えば、同じような購買意欲があるにも関わらず、チェックボックスにチェックをしているユーザーとチェックしていないユーザーがいる場合に、そのユーザーを見落としてしまいます。逆にこういった”ゴーストユーザー”に効果的にアプローチできれば、ビジネスの収益源になるということです。
顧客のセグメンテーションには、他にもデメリットがあります。同じプロファイル(年齢、性別、場所)に当てはまる人は、商品ページ、カートへの追加、購買といったお買い物ジャーニーのどこにいても、同様の割引やCTAを受け取ることになります。
ユーザーの意図によらず、全てのユーザーを同じバケツに入れてしまうことは、機会損失やコストの浪費に繋がっていき、時には不満を持ったお客様がロイヤルティを損ねてしまったり、ユーザーがロイヤルティの高いお客様になる機会が減ってしまうという欠点があります。
ありがたいことに、AIがその手助けをしてくれます。私達が提案するセグメンテーションのアプローチは、標準的なマーケティングのアプローチと比べてよりニュアンスが含まれます。顧客の個人的な特徴を推測するのではなく、機械学習技術を用いて顧客の閲覧行動や履歴を分析します。ユーザー同士を比較してパターンを特定することは可能ですが、私達は現在、それぞれのユーザーごとに購買する確率を計算します。これによってユーザーをターゲティングするための新しい基準、すなわち: converters(購買する人) vs. non-converters(購買しない人)が導き出されることになります。
では、これがどのように動作するか説明しましょう。
購買に繋がる可能性の高いユーザーを見出す
eコマースに携わっている人であれば、Google Analyticsの機能をよくご存知のことかと思います。アクティビティレポートを作成したり、ユーザーをセグメント化することで、ユーザーがどのようにウェブサイトを利用しているかをより理解することができます。またEnhanced Ecommerceモジュールでは、売上ファネルのオーバービューをみることができます。GAダッシュボードの”Shopping Behaviour”セクションに表示されるファネルは、ハイレベルなビューをもたらします。しかし、あるユーザーがコンバージョンして、あるユーザーがコンバージョンしない理由に関する定性的な情報が提供されることはありません。
各レポートを深く掘り下げていくことはできます。例えば、Audience > User Explorerレポートは、それぞれのユーザーの行動を分析するのに役に立ちます。GAはブラウザのクッキーやユーザーIDによって各ユーザーを識別しますが、これはeコマースアプリケーションにユーザーアカウントが存在する場合に利用可能です。しかし、GAのデータをいくら精査しようとも、ミステリーは残ります: マーケターは購買に近いユーザーをどのように特定できるでしょうか?
顧客のコンテキストを使って次の行動を予測する
私達は、ユーザーのアクティビティと履歴が、コンバージョンのプロバビリティに最も関連する指標となる、と仮定しました。
学習アルゴリズムは、Google Analyticsの無料版もしくは360、BigQuery、その他のサードパーティー分析プラットフォームなどのデータソースに直接接続することで、ユーザーのブラウジングセッションの結果を、過去のセッションの情報に基づいて予測します。
AI/MLは、ユーザーをconvertersとnon-convertersに分けるだけではなく、より具体的なターゲティングを可能とします。これによって、ユーザーがこれからはいる可能性の高いショッピングステージに基づいて、ユーザーをエンゲージメントできるようになります。
以下のようなプロバビリティを自動的に計算することが可能です:
- 商品のブラウズの継続
- 商品の買い物かごへの追加
- 購買
- 取引完了
これらのプロバビリティを比較することで、MLモデルは、お客様がどのショッピングのステージに入る可能性が高いかを特定することができます。その結果、ユーザーを対応するセグメントに正しく配置することが可能です。(例えば、ショッピングカートに商品を追加する可能性が高い人)
舞台裏の様子
背景としては、Google Analytics APIから抽出したデータを3つのカテゴリに分けています。
- ユーザー/ブラウザ: クッキーIDで識別されるユーザーに関する情報; ブラウザやモバイルデバイスの種類といった詳細情報が含まれる
- セッション: ショッピングステージ、セッション時間、取引件数、売上、セッション間の日数
- ヒット: 閲覧された、カートに入れられた、購買された、商品の詳細(例えば、値段/名前/カテゴリ)と、Google Analyticsから取得した商品およびその他のクリックイベント
ユーザーは可変なセッション数を持ち、セッションは可変のヒット数を持ちます。
私たちのモデルは、リカレントなアーキテクチャを持ちます: データを時系列に扱います。セッションとヒットのデータは古いものから新しいものへと整理され、一度に1セッションうつAIモデルに透過されます。特定のユーアーの全てのセッションを処理した後に、モデルは、各ショッピングステージが将来のセッションで発生する確率を計算します。
ここまで2つの属性モデルで長期間に渡って実験を行ってきました:
- Linear Attribution Modering (線形属性モデリング): 最初のセッションと最後のセッションの間に経過した時間とは関係なく、全セッションで同じように重要なトランアクションがある場合
- Time decaying attribution modeling (時間減衰属性モデリング): セッションの時期に基づいた半減期の重みを適応させることで、最新のセッションをより重要視する
次の買い物ステージを予測するreal-worldなAI実験
この実務的AIアプリケーションがreal-lifeの中で、どのように動作するかを検証するために、私たちはある家具のeコマースサイトのデータをもとにした実験を行いました。私たちのデータは24188人のオンライン買い物客から得たものですが、そのうち98人が最初のセッションで購買を行いました。全ての売上は151,674ドルで、平均購買金額は1547ドルでした。
リアルワールドな状況では、ターゲットとなるユーアーには、それぞれ顧客獲得コストがかかります。この実験では、それを50ドルと仮定しました。以下の計算ではgross margin(粗利益)は考慮していません。
この実験のポイントは、様々なターゲティング方法の効率性を評価する、ということです。
- 上記で述べた2つの機械学習モデル(それぞれ属性モデルを持つ)
- ランダム
- 統計的手法を用いたもの
それぞれのシナリオにおいて、true positives (正しくターゲティングされたユーザー)とfalse positives(間違ってターゲティングされたユーザー)の割合を計算しました。
そして、それぞれのユーザーとその履歴にもとづいて、0から1の間の数値で購買にいたる確率を計算しました。ユーザーがターゲットされ購入に至った場合はtrue positiveで、ターゲットされたものの購買に至らなかった場合はfalse positiveとなります。
結果は以下のようになりました:
Method | ターゲティングされて購買したユーザー(true positive) | ターゲティングされて購買しなかったユーザー (false positive) | 予想収益の総額 | ユーザー毎のターゲティングコスト$50/user | 収益 – 費用 |
ランダム | 90.84 | 11,949.12 | $102,456.14 | $601,998 | -$499,541.86 |
統計的手法 | 9.99 | 525.12 | $8,508.40 | $26,755.5 | -$18,247.10 |
ML, 時間減衰属性 | 20.02 | 135.72 | $21,842.74 | $7,787 | $14,055.74 |
ML, 線形属性 | 34.04 | 98.93 | $39,524.48 | $6,648.5 | $32,875.98 |
ランダム方式では、最も多くのtrue positive(正しくターゲットされたユーザー)を得ることができましたが、コストが高く、利益は生み出されませんでした。それに比べて線形モデルでは、より少ないユーザーグループを対象しながらも、false positiveの割合は低く(0.41%)抑えられました。これらの予測から、線形属性が最も収益性の高いターゲティング方法であるということができます。
ショッピングステージの予測を使ってeコマースのパフォーマンスを向上させる
次のショッピングステージの予測ができたら、eコマースサイトとマーケティングフローを最適化するためにできることが沢山あります。以下のような方法で、お客様にとってより適切で役に立つショッピングの目的地となることができるでしょう。
- 意図に応じたセグメント化による検索結果の向上
- 意図に応じたレコメンデーションのフィルタリング
- 購買を促すパーソナライズされたポップアップの表示
- パーソナライズされたeメールの送信
- 購買の可能性の高いユーザーへのリマーケティング
AI-as-a-Searviceのプラットフォームを利用することで、Google Analyticsのレポートに費やしていた時間を節約することができます。報告ミーティングに時間を費やすこと無く、チームが姻族に連携し、インサイトを有効に活用することができます。
更に、予想の結果はAPIを介して提供されるため、レポート用ダッシュボードに簡単に統合することができます。そして、モデルのトレーニングと予想を完全に自動化するインフラを保持することで、スケーラブルなソリューションがあなたのものになります。ここれはeコマースのシナリオにおける統合の仕組みをご紹介します:
- ユーザーがあなたのeコマースウェブサイトを訪れる
- ウェブサイトはブラウザのクッキーとAPIコールでどのユーザーかを特定する
- ユーザーの購買確率の予想値を取得する
- 購買確率によって購買促進、値引き、行動のトリガーとなるようなクリエイティブといったパーソナライズされたメッセージをポップアップ等で表示する
AI/MLが、より良い顧客体験を生み出すための強力なドライバーであることは間違いありません。そのためには、オープンなマインドでいることと、既存のデータを新しい方法で検証してみることをいとわない姿勢が必要です。
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