ハイパフォーマンスなレコメンドシステムの解剖学 – パート5

Algolia Advent Calendar 2021の12月10日の記事です。AlgoliaのSenior ML EngineerのPaul-Louis Nech(@PaulLouisNech)が書いたThe anatomy of high-performance recommender systems – Part Vの翻訳です。


レコメンデーションとユーザー行動

こちらの過去のシリーズでは、ハイパフォーマンスなレコメンドシステムとはなにか、どうやって適切なデータソースをフィードするか、どのようにエンジニアが学習させるのに適切な特徴量を設定するか、そしてハイパフォーマンスを実連するために、何が業界レベルのレコメンデーションモデルおよびテクニックなのかといったことを学んできました。

こちらの記事では、ソリッドなレコメンデーションモデルを手に入れた、ということで、ユーザーの話に戻りたいと思います。なぜユーザーはレコメンデーションに関心があるのか?ここでは少し視点を変えて、ユーザーがオンラインでナビゲーションを行う際に、より複雑な決断を迫られているということを考えるていきます。

以下はネットフリックスの調査の引用です。

人類は生活のあらゆる場面において膨大な選択肢に直面している – ビデオ、音楽、本などはもちろんのこと(略)、健康保険のプラン/治療/検査、仕事探し、教育/学習、彼氏/彼女や人生のパートナー、その他にも様々なエリア。

レコメンデーションシステムは、豊富な利用可能データを活用して、選択を管理可能なものとし、評価済みで本当に最適な少数の選択肢に人々を効果的に導いて、結果としてより良い意思決定を行う上で、極めて重要な役割を果たし続けていくと私たちは確信している。

Carlos A. Gomez-Uribe & Neil Hunt. 2015. The Netflix Recommender System: Algorithms, Business Value, and Innovation

私たちは選択肢の多さに圧倒されるような事態に直面しています。例えばYouTubeでは、毎日82年分の映像コンテンツがアップロードされています。ユーザーとしては、この山のようなコンテンツの中から、自分にとって価値のあるものを探し出すにはどうしたらいいのでしょうか?

このブログシリーズの最初に私たちが目指したものは、”ユーザーの要求や好みに応じて選択肢を絞り込み、最適な提案をする”ということでした。ハイパフォーマンスなレコメンデーションシステムを手に入れたら、今度はそのシステムが生成するプレディクション(予測)を最大限に活用して、戦略的な時間と場所でユーザーに見てもらって、適合するアクションを提案していきましょう。

ハイパフォーマンスなレコメンドシステムから得られるものは何か

上記のネットフリックスの引用もからも見ててるように、人類がオンラインで直面する選択肢の海を一人で進んで行くことは既に手遅れな時代です。人間がコンテンツにアクセスするための選択肢を選ぶことが難しいのあれば、そして、人間が正しい選択をするための十分なデータがあるのであれば、その人たちを手助けしないということはビジネスを失うことを意味します。

では、どのようなレコメンデーションがあれば、ユーザーはあなたのサービスを最大限に活用することができるのでしょうか?このシリーズのPart 4では、レコメンデーションのモデルによって提供できるレコメンドの種類が異なるということをご紹介しました。

ユーザーの視点に立ってみると、いずれにしても、ブラウジングのショートカットを得ることができます。ユーザーが時間をかけてランダムにブラウジングを行って最終的にふさわしいアイテムに出会うことを期待する代わりに、ハイパフォーマンスなレコメンドシステムはユーザーのジャーニーのもう敵地をダイレクトに示してくれます。

さらにユーザーは新しいものに出会うこともできます: そのページにたどり着いた人は、関連アイテムが自分の興味を引く可能性があることをしらないかもしれませんが、これらの予測によってユーザーが提供可能なコンテンツに触れることができる機会を増やしていき、うんざりする量の選択肢の中から厳選されたものを活用してもらうことができるかもしれません。

YouTubeの例に戻ると、82年分にもおよぶ新しいコンテンツが毎日追加されているにも関わらず、平均のセッション時間は平均13分と以前として長くなっているのです。その結果YouTubeのユーザーはとてもエンゲージメントが高くなり、20億人の月間のアクティブユーザーのうち、1億2200万人毎日アクティブにYouTubeを利用しているとのことです。

TikTokも同様にこの点がエクセレントです: どのような種類のコンテンツであっても視聴を開始すると、ユーザーとのインタラクションを通じてシステムにユーザーの興味を伝えます。ユーザーが料理動画に興味を示せば、システムは今の好みに合わせて学習するため、そのユーザーのフィードには突然たくさんの料理動画が表示されるかもしれません。

行動を促す: 戦略的なレコメンドからどのような利益を得られるか示す

前のセクションで、多くものオファーしている企業が、ユーザーに役立つ業界レベルのレコメンドを公開することに大きな関心を持っている理由をお話しました。しかし、単純にレコメンドをユーザーに見せるだけではありません。極端な例としては、在庫切れの商品ページにおいて、上位500の関連する商品を代替として表示する場合を考えましょう。どんなにハイパフォーマンスなシステムだとしても、ユーザーがすべての商品をスクロールしてみることはないでしょう。

では、良いレコメンデーションから、戦略的レコメンデーションにはどのように移行できるのでしょうか?

レコメンデーションはユーザーに興味を持ってもらうための手段で、アクションはユーザーに促した結果のゴールです。つまり、良いレコメンデーションとは次のようなものである必要があるでしょう:

  • 限定的で
  • コンテキストに沿っていて
  • 労力がかからない

限定的

少数の適合するアイテムのみを表示する。

より多くのオプションを表示すれば、より多くのチャンスが得られるのではないかと考えてしまいがちですが、この直感は簡単に覆されます。少数のオプション(3〜6)は、多くのオプション(10〜24)に比べて最大で10倍ものコンバージョンがもたらされることが実証されています。私たちは、ユーザーが関連のないオプションをフィルタリングするようにレコメンデーションシステムがあるのであって、最初に解決しようとした”Too Much Informationシンドローム”を復活させるためではないはずです。

コンテキストに沿っている

レコメンドされたアイテムは、ここで今、役に立つものでなければなりません。

レコメンデーションの価値は、現在の時間と場所で、そのユーザーにどれだけ役に立つかで決まります。このような瞬間的な適合性によってコンテキストのアウェアネスは優れたレコメンデーションを提供するための重要な側面となります。

いくつか例を挙げていきます:

  • 商品のランディングページで、ユーザーが商品をカートに入れた後に、購入に必要なすべてのものが含まれているかを気にしているとします。そのタイミングでone-clickでadd-to-cartできるボタンを使った、補完的にFrequently Bought Together(よく一緒に買われている)な商品をレコメンドすることができます
  • 一方で、在庫切れの商品のランディングページで、ユーザーは同じニーズを満たす他のオプションを探している際に、その代わりとなるRelated Products(関連商品)をレコメンドし、その詳細を見るためのリンクを貼り付けることでより高い価値を提供することができます
  • ビデオを見終わった後に、似たようなビデオをレコメンドしても満足してもらえないかもしれませんが、Frequently Watched Together(よく一緒に見られている)なコンテンツをレコメンドすれば、ユーザーの関心を最大限に惹きつけらます。
  • カテゴリーのランディングページにおいては、ユーザーはインスピレーションや新しいアイデアを求めていると言えます。そのために、例えば、カテゴリーのトップセラーの位置に関連商品も表示するなど、このカテゴリー全体で最適なレコメンド商品をカルーセル形式で表示すると、初めて訪れた人を顧客化するのにより良いパフォーマンスを発揮するでしょう。

労力がかからない

レコメンデーションはユーザーの時間を節約し、目的を達成するのに役に立つものでなければ価値があるとは言えません。

  • 逆に、コンサバティブであることも必要です: セレンディピティを高める一方で、多種多様なコンテンツをレコメンドすると、ユーザーが不満を抱いてしまうリスクがあります。ユーザーの立場で、はじめてブラウジングする人の気持で、”このレコメンデーションは私のゴールの達成に役立つのか?”を自問自答しましょう。
  • また、これはイノベーティブであることも意味しています: レコメンデーションは、単にウェブサイト上のカルーセルとしてだけではなく、様々な方法で活用することができます。マーケティングプラットフォームやCMSなど、他のツールにレコメンデーションを導入することで多くの価値を生み出すことが可能です。例えば:
    • Eメールキャンペーン(例: SendGrid): 適合したレコメンデーションをベースにしてメールをカスタマイズ可能です。これによって一般的なWeeklyのメールがダイナミックで適合度の高いニュースレターに様変わりするかもしれません!
    • マーケティングオートメーション(例: Shopify): Algoliaのプレディクションを活用して、ユーザー/商品のインサイトをマーチャンダイズおよびプロモーションのための既存のセットアップと組み合わせれば、Shopifyアプリの利便性を向上させることができます。
    • CRMインテグレーション(例: HubSpot): 顧客のプロフィールに興味がありそうなサービスをセグメント化してレコメンドすることで、営業メンバーが次のコールの際に適切な新機能をご提案することができるかもしれません。
    • SegmentやBigQueryのようなデータプラットフォーム: 生成したレコメンデーションを活用して、自分たちのデータを補強することが可能です。こういったシステムはユーザーに人気のあるサービスや行動を生成する一方で、その結果をバックオフィスのシステムにフィードバックして、自動もしくは手動の意思決定を強化したり、次のプロジェクト/分析/…といったもののために有用な機能を構築することができるでしょう。

これらのガイドラインに従うことで、システムから得られる確かなレコメンデーションを、ユーザーのために効率的に活用できると確信できるでしょう。

レコメンデーションシステムに必要なものは、データとアルゴリズムだけかもしれませんが、レコメンドはそれだけではユーザーの満足度を高める働きをすることはできません。重要なのは適切なタイミングで適切なアクションをサジェストすることであり、ユーザーの満足度を最大化させるには、どのようにレコメンデーションを活用していくかを決めることこそが、このハイパフォーマンスなレコメンドシステムをユーザーベースに役立てて、最終的にレコメンドをビジネスに活かしていくための鍵となります。

レコメンドの成功をどのように計測するか?

こちらのブログポストでは良いレコメンドとは何か、ユーザーはレコメンドに基づいてどのような行動を取れるのか、そしてどうすればユーザーにサービス全体を通してアクションを促すことができるのかを学んできました。Algolia Recommendについてより詳細を知りたい方は、こちらから始めていただくか、私たちのレコメンデーションAPIのドキュメントをご覧くださいませ。

しかし、それが正しいアクションであったかどうかというのはどのように知ることができるのでしょうか?ビジネスのメトリクスに照らし合わせて、レコメンデーションの高価をどのように測定すれば良いのでしょうか?短期的なパフォーマンス(例えば、ユーザーを毎日午前2時まで新しいシリーズのビデオに夢中にさせる)を最適化することで、長期的なビジネスゴール(深夜に何度も視聴した後に、このユーザーがメンバーシップをキャンセルしないようにさせる)を犠牲にするようなことを避けるにはどのようにしたら良いのでしょうか?

このシリーズの次のパートであるResults(結果) and Evaluation(評価)では、レコメンドシステムを活用していくための重要な側面についてご紹介しますのでお楽しみにしていてください!

もし、この会話の続きをしたい人はTwitterで @PaulLouisNech にお声がけください。

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